売った家にのぼりが立てられていて寂しかった

「売り物件!入居希望者募集中!」と書かれたのぼりがたくさん立っているのを見た母は、これらに対してとても寂しい気持ちになってしまったことがあると、私にその過去を語ってくれたことがあります。そののぼりが立てられていたのは、それまで母が父と一緒に暮らしていた一軒家だったのですが、両親はそれを手放すことになってしまいました。その理由は、父の勤めていた会社が倒産をしてしまい、これまで得ていた収入が一気に0になってしまったからです。そのため、この一軒家のローンを支払っていくことができなくなり、これを手放し、今住んでいるアパートに引っ越してくることになったそうです。当時、私はまだ幼稚園にすら通っていないときだったため、一軒家で家族一緒になって暮らしていたという記憶はなく、引っ越してきたという覚えもありません。

そのため、私の記憶の中だけでいうと、このアパートで生まれ、そのままにアパートで今までの生活を送ってきたような感覚でいます。しかし両親にとっては、きちんと過去に一軒家で家族そろって生活をしていたという思い出があり、今でも当時のことを思い出すことがあるといいます。一軒家を手放してしまってから、母は1度だけ、その手放した一軒家を見に行ったことがあったそうです。それは、もしかすると将来、ここに戻ってこられる日が来るかもしれないと思い、その一軒家に対して、「待っていてほしい」という思いを伝えるためでした。

しかしそこに行って母が目にしたものは、一軒家の周りに複数本も立てられていたのぼりだったのです。そののぼりには「売り物件!入居希望者募集中!」と、でかでかと書かれていて、母はこのとき、もうこの一軒家が自分たちのものではないということを実感してしまったのでした。それからというもの、もう1度もこの一軒家を見に行こうとはせず、自分たちは自分たちの新しい生活を作っていこうと決めたのだそうです。私はこれを聞いたとき、私たち家族にそういった過去があったとは知らず、とても驚いてしまいました。私はこれまで、売り物件と書かれいるのぼりを見たことはありましたが、これに対して、このような寂しい思いをする人もいるということを、母を通して知り、家というものには大切な気持ちを抱くものだと学びました。このような経験をしている両親に対して、いつか私から、新しく家族3人で住んでいくことのできる一軒家をプレゼントしたいと思っています。

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